『水は鮮血の夢を見る』
彼の手は透ける事無く。
無彩を有彩に変える力があった。
見えないものを、見えているかのように扱う感性が備わっていた。
「闇の中では些細な光源でも眩しいのだ」
うっとりと蕩けそうな艶を宿した彼の瞳こそ眩しくて、その紅くヌメヌメと照り返す光を舐め取るように、彼の眼球に舌を這わせた。
ぼくが彼の瞳の表面から奪い返した光ごと、拘束するように彼の腕が、骨よりもしなやかに白い指が、磨かれたように鋭い爪が、
獲物を逃さないと肋骨にキツく食い込んでいる。
痛くてぼくは笑った。
ぼくをもっと痛めつけてユーリも笑う。
ぼくは彼に痛いくらいに抱かれて 彼を抱いた。
彼の真っ暗な中にぼくの透明な光を余す事無く注ぎ込んであげた。
彼は瞳や唇、終いには全身をツヤツヤと厭らしく光らせて喜んでいた。
彼に絞りとられてしまって、ぼくはますます透明になってしまった気がした。
それでも彼の手は、はっきりとぼくをとらえたままだった。
ぼくはもう自分が何色だかわからない。
硬くしている筈のペニスの形も感覚も、海の水のようにユーリと一緒に溶けてしまった。
紅い闇に抱かれて身動きが取れないまま、
ぼくは紅く染まってしまって、
彼の中を流れ、毛細に分かれて、染み渡る夢を見た。
鮮血の海にユーリの瞳が浮かび上がり、夕焼けの双子の太陽となって、シャラシャラと照り返し乱反射する光を見つめていた。
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