ユーリのトルソーには内臓の代わりに薔薇が詰まっている。
美しい象牙細工の肋骨の内側には、心臓の代わりに一際大輪の血の薔薇が咲いている。そこから伸びた赤いレースの毛細血管が1つ1つの薔薇とを繋げている。
故にユーリの体臭は薔薇なのだ。首筋や耳の裏、関節の節々からは殊更濃く瑞々しい薔薇の香りがする。
髪や茂みに鼻を埋めると、麝香と薔薇の香りが混ざったような香りがする。気を確かにもたないと頭がおかしくなりそうになる。
口の中は、ユーリの唾液と混ざった血の匂いが土のような匂いに感じるのだろう、目を瞑っていると、雨上がりか…?朝露に濡れた薔薇園にいるようだ。いや、ユーリの口の中こそ、薔薇が咲き乱れた墓地なのかもしれない。
うちのスマイルは、ユーリが恋しくて薔薇園を作ったり、ユーリの体臭に似た香りの薔薇を品種改良して作ったりして、自己満足の自慰的行動に耽っていた。
スマイルの体臭は無い。その代わり生活臭がそのまま体臭の代わりになる。
インドカレーを食べ過ぎると腋臭のキッツイ人の体臭みたいになる…
革製品を身につけると思いっきり革臭くなる。
だから、食事後必ずすぐに歯を磨く。歯ブラシセットを持ち歩いている。消臭スプレーや、匂い消し代わりにミント系の香水も。(歯磨き粉の香りとミント系の香水は同系の匂いだから匂いが混ざっても、トンチキな匂いにならないので普段使いで愛用している)
体臭が無いので、風呂上がりの匂いが長続きしたりする。
香水の香りが変化しないのが少しつまらないと思っている。
匂いも周囲の匂いと同化してしまうので、匂いも"透明"なのだ。
スマイルの体臭が薔薇のようになっている時はユーリと触れ合っていたんだというのがすぐにわかる。
スマイルはユーリの香りが全身から漂うのが嬉しいので、事後自分の身体の匂いを嗅いでニコニコとする。
ユーリはスマイルの体臭から、彼の生活を推測して微笑ましく思っている。自分の匂いで上書きされてしまう前に、髪に鼻を埋めて胸いっぱいに吸い込んで、この正直で透明な生への愛しさに頬擦りをするのだった。
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